究極のカスタマーサポートを実現する方法

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カスタマーサポートとリテンションマーケティング(顧客との安定関係維持)

カスタマーサポートの大きな目的の一つに 特にサブクスなどでは離脱を防止した上でさらに購入機会を増やしてもらうことにある。

リテンションマーケティングについて調べてみたので そこからカスタマーサポートにつながる視点を探したい。

https://tayori.com/blog/customer-retention/
以上のサイトが体系的にまとめられていた。

リテンション率=体の顧客の中で継続利用している顧客の割合は
「モバイルアプリの場合は90日後の平均リテンション率が80%、SaaSビジネスの場合は1ヵ月で90〜97%程度」とある。
この数字は12ヶ月で計算すると
90%のリテンション率では28%の顧客が残り
95%のリテンション率では54%の顧客が残ることになる。

実際には、顧客期間が長いほど離脱率も低いという傾向にあるはずなので 新規で来た人が「やっぱいらないや」という具合に抜けている現状はあるにせよ、 ひとつひとつのカスタマサポートの対応で顧客の維持率が変わり、それがことは 長期的な利益には大きく響くことは事実だろう。

この記事で興味深い点は 「問い合わせをしてから24時間以上経過すると、70.5%の人は我慢の限界が来る」とある。

これはやはりそうか、と思う 反面なんでもかんでも粗くとも早く返せばいいのか、というと感覚に反する面もある。

・MAはあるのにCSAはあまり聞かない理由

数年前からよくマーケティングオートメーション(MA)というワードをよく聞くようになって ツールもタケノコのように様々登場したと思う。 リテンションマーケティングの一環としてもMAツールによって 自動的にクーポン発行やカスタマイズされたメッセージ送信が行われてきただろう。

しかし、カスタマーサポートオートメーション、名付けてCSAはなぜあまり聞かないのだろうか。

機械学習、AI系の技術に関わってきた自分が考える答えは
「カスタマーサポートできるほどの意味理解のテクノロジーが存在しない」からだ。

現状で存在する主なツールはあくまで 似た言葉やフレーズが登場する回答例を探してきて オペレーターに回答候補を提示するものだが これは文章の本当の意味を理解している技術をベースにしているわけではない。

自分の体感ではその礎となる技術もあと10年後以降の登場になると考えているので テクノロジー動向に気を配りつつ、ライバルに負けないためには 良いものを躊躇なく取り入れることが重要だと考える。

海外のカスタマーサクセス事例

https://www.skeletonproductions.com/insights/customer-success-story-examples 以上の記事では7つのカスタマーサクセスの事例を紹介しているので カスタマーサポートに活かしていただきたいことについて独自の視点を交えて記したい。

・hubspot
https://www.hubspot.jp/
hubspotはマーケティングのためのソフトウェアだが この紹介されている顧客ではエンドユーザーの動向を記録しておくのに すごく苦労しており、それが解消されたというストーリーがある。 「ひとつかふたつの最も顧客に関連が深いことに絞って集中して取り組むのが重要だ」とのこと。

たしかにマーケやセールスならともかく カスタマーサポートに関してリソースが潤沢でしょうがない、というケースの方が少ないだろうし それぞれのプロダクトについて顧客が求めるポイントも類似サービスであったとしても 他から教えてもらったり導入したりすることですぐわかるものではない。 限られたリソースの中でかつ他部署とも連携して顧客に価値を提供するには 確かにひとつかふたつのテーマに沿って集中するというのは合理性がある。

この事例共有サイトでは 「73%のBtoBの購入担当者がビデオのケーススタディーを参考にしている」とあるので カスタマーサクセス全体、の価値をはじめに感じてもらう部分では ビデオインタビューの導入は有効そうだ。

・カスタマーサクセスって言葉のトレンド
この言葉をグーグルトレンドで調べると 2018年から検索数が上昇していて今も上昇トレンドにある。 "customer success"という言葉でアメリカのトレンドも調べると 若干下降トレンド入りか?と最近の傾向を除いて 長期的には上昇トレンドだった。

これが意味するところは、というとやはり カスタマーサクセスという概念は広がっている最中で まだまだアーリーアダプター以外は カスタマーサポート=減点方式のいかに効率的にさばくか という意識は強いのだろう。 しかし、サブスクなどモノからコトの消費、体験重視へ顧客が変化していく中で より一層、これからはカスタマーサポートやそれにまつわる顧客体験全体を見通した サービスの提供はトレンドになっていくだろう。

カスタマーサポートとAI(≒機械学習)の現状

私はAI(≒機械学習)のエンジニアでもあるので その視点から、カスタマーサポートがどの程度 テクノロジーによって自動化できるのか、また、今後されうるのかについて触れたい。

現状のAI、特に自然言語処理技術≒言語の理解能力に限っていうと もっぱらビジネスで使えるほどに成熟している分野は 「それっぽい回答を返す」「似た言葉やフレーズの文章を探す」となる。

「文章を理解して想像して返答する」ことはまだほぼできない状況にある。

技術的な詳細はほっておいて代表的な事例は以下のようなものになる。 https://zuuonline.com/archives/181448

三井住友銀行がコールセンター業務において オペレーターに回答候補を提示するという内容になっている。

カスタマーサポート業務に携わる皆様ならお分かりかと思うが オペレーターや担当者の専門知識などのトレーニングは 一朝一夕にはできないし、離職率が高い現場なら すぐやめてもすぐ補充、というわけにいかない事情はここにある。 また、オペレーター自身も分からないことばかりを確度もなく答えるのは ストレスを感じるだろう。

こういったオペレーターの業務負荷軽減、トレーニング短縮などを叶えるのが 上記の事例である。

そう、カスタマーサポートにおいてAIは完全自動化ではなく「部分的補助」の時代である。

・今後10年以内には、人間を補助するツールが登場するはず

海外の最先端の学会など最新の動向をチェックしても 根本的に「文章を理解して想像して返答する」技術の登場の兆しはあまりない。 (厳密にいうとある、あるけど気づいてる人が少なすぎて波にはならないと思っている)

つまるところ、今ある技術やその延長でできるツールが今後5年・10年以内には登場することになる。
例えば
「オンラインマニュアルの自動作成」→人間の最終チェックや編集
「カスタマーサポート人員配置の最適化・問い合わせ予測」
潜在的なカスタマー需要のWEB情報(SNSなど)からの把握」(例えば問い合わせ前での離脱対策などへ)

ここらへんが現状の技術でできる範囲であるだろう。 ただ、技術革新というのは最近のAIブームもそうであるように ひとつの技術が火をつけてまったく非連続的な変化を生み出すこともある。 そういった変化で一気に自動化、となっても大丈夫なように いつか必ず起きるであろう変化に 技術動向には目を配りながら、何をやるか、やらないか、について取捨選択すべきだろう。

Appleなど有名企業のカスタマーサポートに学ぶ NPS

カスタマーサポートの成功を正確に判断するには 定量的な指標が必要だ。

代表的なものであればNPS(ネットプロモータースコア≒企業への愛着や信頼度)があると思う。 詳しい算出方法や説明は以下のサイトがわかりやすい。 https://webtan.impress.co.jp/e/2017/03/08/24303

満足度の調査方法といえば
・アンケートをする
・リサーチを依頼する
などであろうが、CS側から見れば結果が正確にわかったとして 「サービスそのものの価値」なのか「カスタマーサポートの善し悪し」のどちらの寄与なのかということだろう。 この点はカスタマーサクセスの観点から言えば「カスタマーサポートはプロダクトの一部」であるから そもそも分けることがナンセンスかもしれない、が、施作の善し悪しを知るには A/Bテストなどを含めて変数を分離することも一つのやり方だ。

Appleなど有名企業のNPSはどうなっているか?

下記のサイトによると有名企業のNPSはNetflixで52、American・Expressで45など 色々と公開されている。業種によって基準となる平均値などがあるとのこと。 https://seleck.cc/759

そんな中、Appleは2017年以下の記事によるとNPSは72だとある。 (上のサイトだともっと低かったが、年度の違いがあるのだろうか?) https://www.retently.com/blog/apple-nps/

なぜAppleはそこまで高いNPSを出せたのか、上記の記事によると ・購入時への「ちゃんと機能するか?」という不安にサポートで向き合っている ・とにかくディテールにこだわる ・従業員の満足度にも配慮 などにあるとされている。

個人的にはiPhoneユーザーとしてはiPhone5頃までワクワクがあったが 最近はデザインへの慣れと、イヤホンジャックが無くなったことも個人的に不便を感じていて そこまでAppleに期待感はない。 そして、何より、iPhone指紋認証の調子が多少悪かったことがあったが Appleのサポートの番号を調べて、連絡して、返事を待って、最悪製品を郵送して、を想像すると 面倒すぎて放置したのも思い出される。 つまり、個人的なNPSはサポートより製品の頑丈さやデザイン・機能の満足度にしか関与していない。 しかし、ちょっと指紋認証の問題を感じたときに気軽に速いセルフサービスがあったら NPSはもっと上がっていたかもしれないと思う。

つまるところ、パーソナライズされたカスタマーサポートがあればより効果を拡大 できるし 一通りの電話、メールだけの手段だと「本当に困っている状態」まで悪化した客にしか対応できないのだと思う。

スモールビジネスでカスタマーサクセスが失敗しやすいポイント

カスタマーサクセスについて海外のトレンドはどうなのだろう?と考えて 検索している中でアメリカ出身と思われる起業家の書いた面白そうな記事があったので 独自の視点を交えながら引用・紹介したい。

"Why Startups Suck At Customer Success" (≒スタートアップはなぜカスタマーサクセスが苦手なのか) https://medium.com/@jproco/why-startups-suck-at-customer-success-ab7af2960beb

著者はJoe Procopioで マルチexit, マルチfailureの起業家とプロフィールにある。

サブタイトルに「顧客はすぐにあなたのプロダクトを大好きにはならない」 (≒"Your customers aren’t going to love your product right away")とあるところが やはり顧客を掴み良いサービスを提供するために色々な苦労をされてきたのではないか、と想像させる。 (注:訳は意訳です)

・カスタマーサクセスははじめの購入から最後のサポートの電話まですべてを指す そして顧客への価値を最大化することだ 、という考え

たしかに「カスタマーサポート」と聞くと電話・メール対応をこなすだけの業務、とイメージしがちだが やはりカスタマージャーニーに似た概念の最初の接点から最後まで面倒を見る、という主張のようである。

・カスタマーサクセスが失敗するのはまずプロダクトのことを考えてしまい、次に顧客のことを考えてしまうからだ 、という考え
これは本当に新規事業開発をしていて個人的にも痛感した点でもある。 プロダクト開発は忙しいしまず作るまでが大変。お金はメンバーのマネージメントもあると ついつい社内の事情に目がいって、顧客が置き去りになってしまう状況 は少なくないと思う。 つまり、カスタマーサポートをただ部署を作って放っておけばいいものではなく 顧客サービスの重要な一部と捉えてしっかり運用すべきだということだろう。 引用先の記事では特にBtoBでユーザーを置き去りにしやすいとの指摘もある。

・(事業)成長とは規模ではなく、少ないお金とリソースで既存顧客にもっとプロダクトを売り、新規顧客にたどり着くことだ 、という考え

確かに健全でない成長、もっというと中身の薄い成長、再現性の薄い成長というのは存在すると思う。 事業は不確実性が高い中でなんとか売上を伸ばしていくものだと思うが しっかり顧客に向き合う姿勢のカスタマーサクセスを意識できないと ただの偶発的な伸びなのか、意味のある持続性のある伸びなのかわからなくなってしまう、ということだろう。

・カスタマーサクセスはマネジメントより、エンジニアリングに関するものである 、という考え

マネージメントに重点を置くよりは 詳しくテクニカルなことに答えられるように力を注ぐべきという主張らしい。 確かに回答するまでの時間、とかチームのコミュニケーションのようなことばかり考えがちだが 専門性をいかに高く持って正確に回答するか、は確かに当たり前ながら抜けがちな視点かもしれない。

まとめるとカスタマーサポートだけを分断して独立した役割と考えるのではなく やはりユーザー第一目線をどんなときも忘れず サービスの一環として運用することが大切だ、となる。

カスタマーサポートを外注するメリット・デメリット

業務量が多く、今の人員ではさばけない、外注したいと思ったときに どんなメリット・デメリットがあるのかを考察してみる。

メリット

一から採用プロセスを経なくても急遽、人員を増やせる 業務量の変化が激しい場合に、不足を可変的に補ってもらえる 24時間対応

デメリット

カスタマーサポートのノウハウが溜まりにくい マーケティングなど部署横断的に連携することが簡単でない場合もある 結局、答えにくい問い合わせは依頼元に回ってくる場合もある

つまるところ、外注で済ませるべき状況は ・業務量の変化が読めない、そして上下が激しい ・24時間で対応したいような緊急性がある ・会社としてカスタマーサポートに割くリソースが少ない という場合だと思われる。

つまり、結局の採用した場合の時間なども含めて 「1メール(電話)あたりのコスト」は概算でも計算できるはずなので ここは一つの検討余地になるだろう。 もう一つの重要な指標がやはり「顧客満足度」となるが これに関しては離脱率やアンケートによる定量的な調査など 「どうすればカスタマーサポートは良かったと言えるか?」については KPIの決め方はまた、ひとつ工夫が必要となるところだ。

最近のニュースで見たが ランサーズが「オンラインBPO」というものを発表した。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000081.000010407.html

これまでのコールセンターなどのBPOサービスのイメージでは 一箇所にセンターを作って、情報システム管理を行っていたところを リモートで仮想的にオンラインでセンターを運営する、ということらしい。 確かに最近のコロナの事情もありオンライン化・リモート化が加速する中で こういった事例は増えていくでしょう。 つまり依頼する側からすれば「ちょこっと頼んでみたい」の敷居は より下がっていくかもしれない。

だが、同時に思うことはあくまで最高品質のカスタマーサポートを考えるとき プロとしてどこまでユーザーにベストな対応をできるのか、というところは やはりある程度の内製が必要か、あるいはテクノロジーやマニュアルの力を借りるのもひとつだろう。

カスタマーサポートの究極系=問い合わせゼロ

ユーザー視点でのカスタマーサポートの究極系は 問い合わせる必要が無い状態。

わざわざわからないことをメール・電話するのは手間も時間もかかる。

では問い合わせを減らすにはどうすればいいか? ・FAQ、マニュアルを充実させる ・ユーザー同士で教え合って解決してもらう

つまりセルフサービスがひとつの答えとして挙げられる。

<セルフサービスの例:ヘルプセンター≒FAQサイトの充実>

これをツールで解決したいとすると、有名なzendeskの中では Zendesk Guideというサービスがあるらしい。

https://www.zendesk.co.jp/guide/ (注:紹介するのにお金もらっていません)

上記のページによると350件→150件に問い合わせが減った事例もあるということで 実に業務量が半分以下になるとすれば革命的と言えると思う。

ただし、ユーザー目線で考えるととにかくFAQに誘導しまくって 問い合わせにくくしているサイトなども見かけるが あれは逆効果だと思うし、問い合わせが減っても離脱につながっている可能性もある。 あくまで、ユーザー視点で「セルフサービスも選べる」という自由さが大切に思う。

ツールの導入するまでの問い合わせ量でもない、もしくは 本格的なヘルプページを作るリソースもない、という場合でも 月間でよくある質問をまとめて掲載するだけでも効果はあるだろう。 ただ、ここに先にも述べた「問い合わせに至るまでの導線」で うまくユーザーにストレスがかからないように情報提供すべきだろう。

<有名IT企業に学ぶ問い合わせ導線の設計>

ここらへん、有名企業はどうやっているのか?と思い調べてみた。

まず「メルカリ」 この規模の企業になれば問い合わせ量も半端なく多いだろう。 https://www.mercari.com/jp/help_center/article/749/ 以上を見てみるとまず、「よくある質問」が欲張らないで限られて絞られている雰囲気がある。 そして次にカテゴリーの提示。 でも正直特に自分のようなせっかちな人間からすると2クリック以上してまで 回答を探そうと思わないし、検索窓も入力が面倒くさいと感じることは多い。 やっぱりキーは「よくある質問を絞って提示する」であると思う。

次にクラウド会計ソフトの「freee」 https://support.freee.co.jp/hc/ja メール・チャット・電話・ヘルプセンター(自己解決)など色々用意されている。 若干、情報が豊富な分、簡単に答えにたどり着けるのかという印象も受けるが これはやはり会計サービスの特性上、正確さが重要視されるということもあるのかもしれない。 ここから学べることは「ユーザーがどういった状況で問い合わせするのか?」というケースに合わせた 導線の設計ということになる。